コバの仕上げ方について <下地編>

今回はコバの仕上げ方について私の採用しているやり方をお伝えしたいと思います。

コバへのアプローチは大げさに言うと、職人の数と同じくらいにそれぞれの仕上げ方が存在すると言いたくなるくらい様々です。

ということは、どれが正解となかなか言えるものではありません。

ただ、最終的にコバがうまく仕上がっておれば、その道筋はどういうルートをたどっても大丈夫だとも言えます。

そういった状況があるということを割り引きつつ、参考になりそうでしたらご自身のやり方に取り入れてみてお役立てください。

 

以前、インスタグラムのポストでもぼやいたのですが、お世話になっていたコバインクを製造・販売されていた会社が廃業されて、他社製品に乗り換える必要が出てきてしまいました。

今までの製品の使い心地、仕事の流れ、仕上がり具合は自分にとっては理想的ですっかり馴染んでいましたので、なるべくそれを再現したいと思っていました。

その時はいろいろ他社製品を試してはみたけれど、なかなかしっくりくるものがないとぼやいていました。

そうしているうちに、以前使っていたものと近いものが見つかり、ようやく安定してきたかなという手応えをえてきたので、ここに書いてみたいと思います。

 

ずっと信頼して使っていたコバ関連の製品というのは、豊島化学株式会社さんが製造されているものでした。

豊島化学さんの製品で、コバインクももちろんのことながら、私にとって大きい存在だったのは同シリーズの「シーラー」でした。

シーラーとは英語の ” seal ” に er がついたものですが、本来、「封をする」などの意味があります。

日本語で言う、「シールを貼る」のことですね。

では革素材を相手にした場合でいうと、シーラーとはどのように機能するのでしょうか。

革はたくさんの繊維が網の目のように絡み合って構成されています。

一見、ぎっしりと目が詰まっているように見えますが、拡大すると繊維と繊維の間には隙間があります。

革の断面、すなわちコバになんの処理もなしにコバインクや染料を入れていくと、その繊維と繊維の隙間に吸い込まれていってしまい、コバ面に定着せずキレイに仕上がらないということになります。

そこで、コバインク等が吸い込まれるのを防止し、パテのようにその繊維の隙間を埋める役目をしてくれるのがシーラーなのです。

シーラーによってコバ面に層が形成されると、コバインクの吸い込みは抑えられ、表層で定着させることができます。

豊島化学さんでは下塗り剤として販売されていたのですが、これが絶妙な使い心地でひじょうに助かっておりました。

各社様々なシーラー的な製品を販売されていますが、私が重要なポイントとして考えるのは扱いやすい粘度です。

水みたいにサラサラなのは革の繊維にたいして吸い込みはいいのですが、乾いてしまうと繊維と繊維の間をうめるパテの役割は果たしてくれません。

かといって粘度が高すぎるドロドロのものはコバからもはみ出やすく、塗りにくいので作業効率が低下してしまいます。

その中間のほどよい粘度のシーラーを探していたんですが、ようやく見つかりました。

兵庫県は姫路のユニタスさんという会社のエッジペイントというシリーズです。

ご存知のかたも多いかもしれませんが、コバインクもたくさん色が揃っていて、調色もしてくださいます。

そのシリーズにシーラーがラインナップされています。

これを試したところ以前の豊島化学さんのシーラーと近い使い心地で、今までとほぼ変わることなくコバを仕上げることができています。

幸いなことにコバインクについてもユニタスさんは豊島化学さんのレシピに近いものをリリースしてくださっています。

おそらくユニタスさんに乗り換えられたメーカーも多数あるのではないかと思われます。

では、具体的なやり方について見ていきましょう。

 

ユニタスさんはシーラーを塗布し半乾きの状態でエッジペイント(コバインク)を塗ることを推奨されています。

私の場合はというと、コバにシーラーを塗り、乾かしてから念を引き、次にバフをかけていきます。

 

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大阪の安井商店さんで購入したバフ

フェルトバフと木バフをセットしていて、モーターの回転する力を利用して磨いていきます。

 

バフが入らないような形状のコバはルーターを使用します。

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ルーターに取り付けている先端工具は、彫金で使用されているものを流用しています。

フェルトバフには好みの幅の溝を切り、そこにコバを押し当てて磨いていきます。

力の加え方や押し当てる角度は数をこなして研究していくほかありません。

 

磨く際にはコバにある程度の硬さが必要となります。

クローム鞣しで仕上げられた柔らかい革のコバは、シーラーを塗布し乾かすことによって少し硬度をあげることができます。

タンニン鞣しの革がコバを仕上げるのが比較的容易で、クローム鞣しの革が難しいのはこの点に集約されると思います。

ユニタスさんのシーラーは豊島化学さんのと同様、適度な粘度があり革の繊維の間に染み込みつつ、かつパテとなり繊維の隙間も埋めてくれます。

 

この工程ではバフで磨くことで、ザラザラでぼこぼこしたコバ面をきれいに均していきます。

ここで下地をいかにきれいに仕上げておくかでコバインクを塗った際のコバの完成度がかわってきます。

私の場合はバフがけの後、特に耐水ペーパーなんかでやすりがけすることはなく、コバインクを塗っていくことになります。

コバインクのような顔料系のインクをお使いの方は粘度が高めに設定したインクを厚塗りすることによってコバの表面の滑らかさを演出しようとされるかもしれません。

もちろんそれでもいいんですが、それだと何度も厚塗りを繰り返さないといけませんし、乾くまでだいぶ時間がかかってしまいます。

それよりも下地をきれいに仕上げておくことによって、コバインクを薄く塗るだけでもじゅうぶんに美しいコバが実現します。

染料仕上げに近いような見た目にすることも可能です。

これにはうまく塗る道具も必要なんですが、それについては項をあらためて書いてみたいと思います。