コバの仕上げ方について <番外編>

コバ塗り機というのがあります。

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量産をするときはあると便利です。

ローラー部にインクが自動的に供給され、そのローラーにコバを押し当てて塗っていくという構造です。

たくさんのパーツを塗らないといけない、あるいは塗る距離が長いとなると、コバ塗り機がないと話にならないのかもしれません。

使っていらっしゃる現場としてはランドセルメーカーさん、ベルトメーカーさんなんかが多いのではないでしょうか。

ただ、便利なコバ塗り機もセットアップ、そしてアフターケアが大変なんです。

本当にしょっちゅうコバ塗りをしているということであればその手間は我慢できるでしょう。

でも中途半端な量とかだとセッティングや使い終わった後の装置の洗浄の手間を考えると、手で塗った方が早いというふうになります。

また、実際に使ってみた感触として、コバ塗り機は厚みが薄いパーツは苦手ですね。

厚みが1mmも無いものだったりするとなかなか厳しい世界でした。

 

 

また、「墨コロ」とか「コロコロ」とか呼ばれている簡易なコバインク用のローラー器具があります。

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むかし購入した時には、今のようにお手軽にアマゾンでも売られているような状況ではなく、ほとんど販売されていなかったように思います。

理屈としては、たしかにごもっともな構造で、そして今よりずっと高価でした。

当時はコバ塗りが楽になるのであればと思って購入しました。

ある程度使いましたが、やはりこれもパーツにある程度の厚みがないと使いづらいと思います。

それと、このコロコロシリーズはコバインクをローラーにのせる量の調節が難しく、コバに塗れたとしても必要以上の量が塗られてインクが垂れてきたり、乾かし方がやっかいであったりします。

私が購入したものはローラーにコバインクをのせる量を調節できるような工夫がされていましたのでそこそこ使えました。

残念ながら、現在ではファーム入りとなっています。

 

 

続いて、最近試したアイテムに「コバ塗り職人」があります。

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コバ塗り職人的な類似品もたくさん出回っていますね。

どれがオリジナルなのか存じ上げないのですが。

たまに使いますが、残念ながら絶賛というほどのものではありません。

これも結局「コロコロ」の仕組みをよりコンパクトにしたものですので、先端のローラー部へのせるコバインクの量の調節が難しいのが弱点となっています。

そしてもう一つの難点、手入れが面倒ということが挙げられます。

ローラー部にはコバインクを含ませるために溝が切ってあります。

使用後は(あるいは使用を中断する場合は)、速やかに水につけて固めのブラシでインクを洗い落とさないといけません。

構造も二つのパーツとネジから組み立てられており、パーツとパーツの間にコバインクが残ったままで乾いてしまうと面倒です。

ですので使用するときは絶えず横に水の入った容器をおいて、中断するときはすぐに水につけておかないといけません。

私がコバ塗り職人を使う場合というのは、はみ出たとしてもコバインクよりも被害が少ない、そしてたっぷり塗っても大丈夫なシーラーを塗るときに使うくらいです。

 

とあるイタリアのバッグブランドがコレクションのムック本を2010年に出していたことがありました。

大部分は創業家やブランド、商品の紹介に割かれていましたが、見開き2ページだけバッグ工場の生産現場の写真が収録されていました。

はっきりいってそのブランドの成り立ちやデザインにはほとんど興味はなかったんですが、そのページを見たいがために購入した覚えがあります。

 

・どんなミシンを使っているのか?

・どんな工具を使っているのか?

・コバインクは?

・はたまた工場の動線は?

 

などなど。

そのページから読み取れるだけの情報を学ぼうと必死でした。

ちょっと話が逸れてしまいましたが、その写真の中にコバ塗りのシーンもありました。

よく見るとスティック状の道具を使っています。

もしかしたら先端部は回転する(?)コバ塗り職人的な構造なのかもしれません。

写真が小さいのではっきりとはわからないんですが。

あながちアクリルスティックも間違ってはなかったようだ!と思ってちょっと嬉しかったのを覚えています。

ということで、「コバ塗り職人」は真鍮製でかっこいいのですが、前回取り上げたアクリルスティックでもけっこう代用できます。

 

以上番外編でした。

コバの仕上げ方について <コバ塗り編>

前回のブログではコバの仕上げ方について取り上げ、下地の作り方まで書きました。

下地ができれば、つぎはコバインクを塗っていきます。

シーラーについても書きましたように、各社からシーラー的な塗料は販売されていますが、いろいろ試してみて好みのタイプを探り当てないといけません。

コバインクについても同じです。

ちなみに私の好みはツヤがあるものが苦手で、マットな仕上がりのものを好みます。

できれば「ド」がつくマット仕様が好みで、そういうのはなかなか売られていません。

豊島化学さんのマット仕様は他のメーカーでは味わえないマット感がありました。

ユニタスさんは豊島化学さんのレシピと近い塗料を作ってくださっていますので、仕上がり具合もかなりのマット感があり、今のところ私はひじょうに満足しております。

ちなみにユニタスさんのマットバージョンについては通常のマット仕様と、より一段と強いディープマット仕様があり、私はディープマット仕様を使っています。

 

では、コバに <何を使って?> 塗るのか、です。

 

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これはアクリルのスティックと「激落ちくん」というメラミンフォームのスポンジです。

アクリルのスティックは東急ハンズで長いのを買って来て、好みの長さ10cmくらいにカットしたものです。

これ、たぶん10年近く経ってるかもしれません。。

たくさんありましたが、劣化してくると折れてしまうので、もう数少なくなりました。

また買わないといけません。

むかし、革を触り始めたとき、周りでは綿棒を使ってコバインクを塗っていくという人が多かったように思います。

安いし、どこでも入手可能なのはいいですね。

ただ、どうしてもしっくりきませんでした。

染料仕上げなら綿棒でもいいと思います。

スティック状というのは操作性が高いのでいいんですが、先端部がコバインクをどんどん吸っていきます。

それが逆に、コバにインクを定着させにくくなってしまうというのがどうも好きになれませんでした。

そこで、インクがしみ込まないで、スティック状で、かつ洗えば何度も使えるものはないだろうかと探してたときに、アクリルのスティックはどうだろうかとふと思いついたのでした。

まぁ、もちろんこれも万能ではありませんが、綿棒よりは使えると思います。

私はちょっと厚めのコバにシーラーやコバインクを塗る時に使用しています。

 

そして、今回の話のハイライト、そう「激落ちくん」です。

スーパーやアマゾンでも販売されていますので、入手しやすいです。

家事で日常的に使われてて馴染みがある方も多いのかもしれません。

使い方はとっても簡単。

カッターなんかで簡単にカットできるので、使いやすい大きさにカットします。

いろいろ好みは出てくると思いますが、私の場合は三文判くらいの大きさでしょうか(画像を参考にしてください)。

 

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あとは先端をコバインクに浸して塗っていくだけです。

スポンジが適度なコバインクを吸い上げてくれ、そしてコバ面に適量を塗布することができるんです。

最初はどれくらいの圧力でコバに塗っていったらいいのかわからないかと思いますが、数をこなせばすぐに慣れますよ。

1mmにも満たない厚みのコバも簡単にキレイに塗ることができます。

 

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ご存知のようにコバインクは乾くと固まりますから、使用後の激落ちくんの先端部はカチカチになります。

でも次に使用するときは先端部だけをカッターで落としてあげれば、また新しい状態でコバ塗りを始められるというわけです。

手入れについてはほぼ無いと言えますし、コスパの面からも優れていると思います。

 

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もっともっと量産ということになれば、機械の力を借りないといけない状況になってくると思います。

たいした量でなければ、この激落ちくんとアクリルスティックがあれば十分です。

美しさでもひじょうに満足のいくコバに仕上げてくれますよ。

コバの仕上げ方について <下地編>

今回はコバの仕上げ方について私の採用しているやり方をお伝えしたいと思います。

コバへのアプローチは大げさに言うと、職人の数と同じくらいにそれぞれの仕上げ方が存在すると言いたくなるくらい様々です。

ということは、どれが正解となかなか言えるものではありません。

ただ、最終的にコバがうまく仕上がっておれば、その道筋はどういうルートをたどっても大丈夫だとも言えます。

そういった状況があるということを割り引きつつ、参考になりそうでしたらご自身のやり方に取り入れてみてお役立てください。

 

以前、インスタグラムのポストでもぼやいたのですが、お世話になっていたコバインクを製造・販売されていた会社が廃業されて、他社製品に乗り換える必要が出てきてしまいました。

今までの製品の使い心地、仕事の流れ、仕上がり具合は自分にとっては理想的ですっかり馴染んでいましたので、なるべくそれを再現したいと思っていました。

その時はいろいろ他社製品を試してはみたけれど、なかなかしっくりくるものがないとぼやいていました。

そうしているうちに、以前使っていたものと近いものが見つかり、ようやく安定してきたかなという手応えをえてきたので、ここに書いてみたいと思います。

 

ずっと信頼して使っていたコバ関連の製品というのは、豊島化学株式会社さんが製造されているものでした。

豊島化学さんの製品で、コバインクももちろんのことながら、私にとって大きい存在だったのは同シリーズの「シーラー」でした。

シーラーとは英語の ” seal ” に er がついたものですが、本来、「封をする」などの意味があります。

日本語で言う、「シールを貼る」のことですね。

では革素材を相手にした場合でいうと、シーラーとはどのように機能するのでしょうか。

革はたくさんの繊維が網の目のように絡み合って構成されています。

一見、ぎっしりと目が詰まっているように見えますが、拡大すると繊維と繊維の間には隙間があります。

革の断面、すなわちコバになんの処理もなしにコバインクや染料を入れていくと、その繊維と繊維の隙間に吸い込まれていってしまい、コバ面に定着せずキレイに仕上がらないということになります。

そこで、コバインク等が吸い込まれるのを防止し、パテのようにその繊維の隙間を埋める役目をしてくれるのがシーラーなのです。

シーラーによってコバ面に層が形成されると、コバインクの吸い込みは抑えられ、表層で定着させることができます。

豊島化学さんでは下塗り剤として販売されていたのですが、これが絶妙な使い心地でひじょうに助かっておりました。

各社様々なシーラー的な製品を販売されていますが、私が重要なポイントとして考えるのは扱いやすい粘度です。

水みたいにサラサラなのは革の繊維にたいして吸い込みはいいのですが、乾いてしまうと繊維と繊維の間をうめるパテの役割は果たしてくれません。

かといって粘度が高すぎるドロドロのものはコバからもはみ出やすく、塗りにくいので作業効率が低下してしまいます。

その中間のほどよい粘度のシーラーを探していたんですが、ようやく見つかりました。

兵庫県は姫路のユニタスさんという会社のエッジペイントというシリーズです。

ご存知のかたも多いかもしれませんが、コバインクもたくさん色が揃っていて、調色もしてくださいます。

そのシリーズにシーラーがラインナップされています。

これを試したところ以前の豊島化学さんのシーラーと近い使い心地で、今までとほぼ変わることなくコバを仕上げることができています。

幸いなことにコバインクについてもユニタスさんは豊島化学さんのレシピに近いものをリリースしてくださっています。

おそらくユニタスさんに乗り換えられたメーカーも多数あるのではないかと思われます。

では、具体的なやり方について見ていきましょう。

 

ユニタスさんはシーラーを塗布し半乾きの状態でエッジペイント(コバインク)を塗ることを推奨されています。

私の場合はというと、コバにシーラーを塗り、乾かしてから念を引き、次にバフをかけていきます。

 

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大阪の安井商店さんで購入したバフ

フェルトバフと木バフをセットしていて、モーターの回転する力を利用して磨いていきます。

 

バフが入らないような形状のコバはルーターを使用します。

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ルーターに取り付けている先端工具は、彫金で使用されているものを流用しています。

フェルトバフには好みの幅の溝を切り、そこにコバを押し当てて磨いていきます。

力の加え方や押し当てる角度は数をこなして研究していくほかありません。

 

磨く際にはコバにある程度の硬さが必要となります。

クローム鞣しで仕上げられた柔らかい革のコバは、シーラーを塗布し乾かすことによって少し硬度をあげることができます。

タンニン鞣しの革がコバを仕上げるのが比較的容易で、クローム鞣しの革が難しいのはこの点に集約されると思います。

ユニタスさんのシーラーは豊島化学さんのと同様、適度な粘度があり革の繊維の間に染み込みつつ、かつパテとなり繊維の隙間も埋めてくれます。

 

この工程ではバフで磨くことで、ザラザラでぼこぼこしたコバ面をきれいに均していきます。

ここで下地をいかにきれいに仕上げておくかでコバインクを塗った際のコバの完成度がかわってきます。

私の場合はバフがけの後、特に耐水ペーパーなんかでやすりがけすることはなく、コバインクを塗っていくことになります。

コバインクのような顔料系のインクをお使いの方は粘度が高めに設定したインクを厚塗りすることによってコバの表面の滑らかさを演出しようとされるかもしれません。

もちろんそれでもいいんですが、それだと何度も厚塗りを繰り返さないといけませんし、乾くまでだいぶ時間がかかってしまいます。

それよりも下地をきれいに仕上げておくことによって、コバインクを薄く塗るだけでもじゅうぶんに美しいコバが実現します。

染料仕上げに近いような見た目にすることも可能です。

これにはうまく塗る道具も必要なんですが、それについては項をあらためて書いてみたいと思います。