芯材の活用について

鞄を作っていく上で、出来上がりの表情を左右するもののひとつに芯材があります。

もちろん芯材を利用しなくても鞄は作れます。

でも芯材を利用することで、より理想の顔つきの鞄に近づけることができます。

 

皮革は天然素材ですので、どうしても繊維の流れ・向きなどが一定ではありません。

型紙通りに裁断したとしても、長時間おいておくと繊維の向きに影響されて歪みや縮みが出てくる場合があります。

そうした現象を防ぐためにも芯地を裏張りすることは有効です。

また出来上がった鞄の型崩れも防ぐことができますね。

ピンと張ったような雰囲気を出したりもできます。

強度を出すということでも活躍してくれます。

そのため、そうした用途のためにさまざまな芯材が流通していますが、どういう雰囲気の鞄を目指すのかによってうまく使い分けないといけません。

マッチしていない芯材を使うと、せっかくの革の風合いを損なってしまうことになります。

 

たとえば、私が好んでよく使用する芯材についてご紹介したいと思います。

それは布地に糊引きしたもので、3種類の硬さが用意されており、それぞれ素材によって使い分けています。

「独シュリンク」という革がありますが、その名の通り薬品を使ってギュッと縮ませた革です。

そのため、本来の大きさよりも小さく仕上がっているので、繊維の目詰まりがひじょうに高く、十分なコシもありながら弾力もあるというとても魅力的な革に仕上がっています。

そもそも革本来の力がある素材ですので、芯材なしで仕立ててももちろん問題ありません。

ただ、鞄として使用していく上でどうしても革は痩せてきてしまいます。

そこで芯材を使用しておくと、後々の鞄の表情をより理想に近いものに保持してくれます。

では、独シュリンクの革の風合いを損ねることなく威力を発揮してくれる芯材は何でしょうか。

硬めの芯材だとせっかくの独シュリンクの表情を歪めかねません。

その一つの回答に、昔、大先輩から布地に糊引きした芯材を教わったのでした。

ばきばきと変なふうに曲がることもなく、あたかも芯地を仕込んでいないかのような雰囲気に見えるのですが、黒子として立派に芯地としての役割を果たしてくれます。

独シュリンクだけに有効というのではなく、他の皮革にも十分活用できると思います。

どちらかというとクローム鞣しの革や柔らかめの革に向いた芯材でしょうか。

 

素材に合った芯材を活用することで、鞄の表情をいっそう豊かに表現することも可能です。

いろいろと活用してみることで表現の幅を広げられると思います。

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