ミシンの押さえ跡をなくすためには

商品画像なんかで、ミシン仕立ての場合、押さえの跡が商品にくっきりついてしまっているものをよくお見かけします。

特に上下送りミシンを使われている方はご苦労なさっているのかもしれません。

もちろん送り跡をなるべく残さないよう工夫のされたさまざまな種類の押さえ金が販売されていますので、そういったものをフル活用していくのはもちろんのことです。

とはいえ、押さえ金にスパイクのようなギザギザがついていない押さえでさえ、万能ではありません。

どうしても生地を挟むときには圧力がかかりますから、ヌメ革系を縫う場合はどうしても押さえ跡が残ってしまいます。

今までは押さえたときに生地にあたる角の箇所を丸みが帯びるようにいろいろ削ったりもしました。

試行錯誤を重ねていたんですが、偶然見かけた広告で、思わぬアイテムに出会ったのです。

それがこちらです。

 

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どこかの製薬会社のネーミングかと見紛うほどなんですが、とてもいい仕事をしてくれます。

ゲル状の接着剤なんですが、硬化するとゴム状の弾性を保持したままの状態で仕上がります。

これは利用できるのではないかと思ったのでした。

本来の使い方とはズレてしまっているんですが、ここでの使用方法は簡単。

押さえ金の塗布したい面を溶剤やニッティングシャワーなんかで脱脂します。

そしてヘラか何かですくって薄く塗るだけ。

表面を綺麗に塗ろうとしなくても大丈夫です。

時間がたてば重力に従って均されていきます。

量もそんなに厚みを盛ろうとするよりは薄くで大丈夫だと思います。

 

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乾くとゴム状に仕上がります。

押さえ跡がつかないだけでなく、革をキュッキュッとはさむような感じで押さえていきますので、すべりどめにもなります。

もちろんゴム状のものですので、使用頻度によって劣化していきますし剥がれてもきます。

私が購入したものは135ml入りのものだったのですが、ミシンの押さえに使うならあと何百回も使える!というぐらいの量ですので、劣化してきたり剥がれてきても何回もやり直せます。

ひじょうに簡単な作業なんですが、ひとつ弱点があります。

乾くまで時間がかかってしまうんです。

1時間くらいはみておいたほうがいいかもしれません。

ですから仕事上で切れ目なくまわすとすれば、スペアの押さえを用意して別にセッティングしておく。

あるいは仕事終わりに塗布しておいて、次の日からの使用に備える。

というように工夫しないといけません。

ミシンの押さえ跡にお悩みの方はぜひお試しください。

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芯材の活用について

鞄を作っていく上で、出来上がりの表情を左右するもののひとつに芯材があります。

もちろん芯材を利用しなくても鞄は作れます。

でも芯材を利用することで、より理想の顔つきの鞄に近づけることができます。

 

皮革は天然素材ですので、どうしても繊維の流れ・向きなどが一定ではありません。

型紙通りに裁断したとしても、長時間おいておくと繊維の向きに影響されて歪みや縮みが出てくる場合があります。

そうした現象を防ぐためにも芯地を裏張りすることは有効です。

また出来上がった鞄の型崩れも防ぐことができますね。

ピンと張ったような雰囲気を出したりもできます。

強度を出すということでも活躍してくれます。

そのため、そうした用途のためにさまざまな芯材が流通していますが、どういう雰囲気の鞄を目指すのかによってうまく使い分けないといけません。

マッチしていない芯材を使うと、せっかくの革の風合いを損なってしまうことになります。

 

たとえば、私が好んでよく使用する芯材についてご紹介したいと思います。

それは布地に糊引きしたもので、3種類の硬さが用意されており、それぞれ素材によって使い分けています。

「独シュリンク」という革がありますが、その名の通り薬品を使ってギュッと縮ませた革です。

そのため、本来の大きさよりも小さく仕上がっているので、繊維の目詰まりがひじょうに高く、十分なコシもありながら弾力もあるというとても魅力的な革に仕上がっています。

そもそも革本来の力がある素材ですので、芯材なしで仕立ててももちろん問題ありません。

ただ、鞄として使用していく上でどうしても革は痩せてきてしまいます。

そこで芯材を使用しておくと、後々の鞄の表情をより理想に近いものに保持してくれます。

では、独シュリンクの革の風合いを損ねることなく威力を発揮してくれる芯材は何でしょうか。

硬めの芯材だとせっかくの独シュリンクの表情を歪めかねません。

その一つの回答に、昔、大先輩から布地に糊引きした芯材を教わったのでした。

ばきばきと変なふうに曲がることもなく、あたかも芯地を仕込んでいないかのような雰囲気に見えるのですが、黒子として立派に芯地としての役割を果たしてくれます。

独シュリンクだけに有効というのではなく、他の皮革にも十分活用できると思います。

どちらかというとクローム鞣しの革や柔らかめの革に向いた芯材でしょうか。

 

素材に合った芯材を活用することで、鞄の表情をいっそう豊かに表現することも可能です。

いろいろと活用してみることで表現の幅を広げられると思います。

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