ファスナーの美学

弊社で好んで使用しているファスナーにYKKのEXCELLA(エクセラ)があります。
まず特徴としてあげられるのがその「務歯」(ムシ)の形状にあります。
ムシとはファスナーのつぶつぶの”歯”のことでエレメントともいいます。
エクセラはこのエレメントの形状を見直し、成型したのちに一粒ひとつぶ磨きをかけた仕上げを行っています。

 

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研磨によって実用面ではファスナーの開閉が滑らかになるとともに、従来のエレメントよりも光沢が与えられ装飾的美しさがぐんと増しています。
YKKはファスナーにおいて日本が誇る世界屈指のメーカーですが、このエクセラの登場はその地位をさらに押し進めることになったと思われます。
まわりを見渡してみると世界のスーパーブランドで使用されているのを目にすることができます。
有名なところではルイ・ヴィトン、ハンティングワールド、日本では吉田かばんなど多くのメーカーで採用されています。

いかにエクセラが他のファスナーよりも機能的に優れているのか ーーー ここであらためて説明するまでもなく検索してみれば様々な情報が入手可能な時代です。
たちまち詳細な情報を集められることでしょう。

「機能的に申し分ない。」
だから多くのメーカーがエクセラを採用しているという現状にいたったのでしょうか?

もちろん世界のスーパーブランドが採用しているからという事実そのものが弊社のようなまた新たなメーカーをすいよせる魅力となっているという良い循環もおきているでしょう。
また、日本的なきめの細かい対応で仕様や納期に信頼がおけるからということも考えられます。
そうした理由でエクセラの採用にいたったというのは納得できますし、賢明な選択だと思われます。
(もちろんわたしたちもそのような理由でエクセラを選択しているのは確かです。)

ただエクセラが必要とされる理由は上記で述べたようなものだけでは捕捉し切れていないような気がするんです。

どうしてわたしたちはエクセラを使いたくなるのか?

 
鞄などの場合、表面積における金具の割合はごくわずかです。
しかしながら皮革という素材とまったく異なる金属が同居するわけですから、いくら表面積が小さくとも金具やファスナーが全体にあたえる影響は慎重に考慮に入れる必要があります。
そのことから金具をまったく使用しないという選択肢もありますし、使用するならよほどの注意をもってかからないと台無しにしてしまう恐れがあります。
街で見かける鞄たちにも金具に残念なものを採用しているせいで全体が安っぽくなってしまっているものをたくさん見かけます。
だからこそ力のあるブランドは自社オリジナルの金具を製作することに腐心しますし、刻印を入れてその唯一性を保持しようとします。
その「少しの」金具が全体の雰囲気をドラスティックに変える力を持っているということにちゃんと気づいているからなんです。
ホームページのCONCEPTにも書きましたが、単にモノを入れて持ち運ぶだけの道具に終始してしまうのではなく持ち歩いて出かけること自体が目的になり得るような商品を目指すわたしたちにとってこれは重要な課題であると考えています。
やたらと設備投資にまわせるような恵まれた環境でないかぎり、既製の商材の中で自分たちの目指すべき商品像へ近づくための手だすけとなってくれる存在の有無は弱小ブランドにとっては死活問題となります。
そうした悩みを解決してくれる存在のひとつがエクセラだと思うのです。

 

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